糖尿病には数多くの治療選択肢がありますが、薬に頼りすぎる治療はよくありません。何が原因で高血糖になっているのか、患者さんのライフスタイル、糖尿病のタイプや病態を適切に判断し、その原因を捉えることがとても重要だと考えています。そもそも糖尿病とはどのような状態でしょうか。
糖尿病の病態と症状
糖尿病とは、インスリンというホルモンがうまく働かないために、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高くなってしまう病気です。膵臓から分泌されるインスリン(血糖を下げるホルモン)が減少する、あるいは膵臓からインスリンが分泌されていても十分に働かないために、体内で血糖(ブドウ糖)が有効に活用されず、高血糖状態となります。
血液中の糖が増えて高血糖の状態になると、全身の血管が傷つけられ、
などさまざまな症状がでてきます。糖尿病の初期は自覚症状がわかりにくいため、病状が進行してさまざまな合併症が起こってから、はじめて糖尿病と診断されることが多くあります。
血糖とインスリンの関係
血糖はどのようにして体の中で処理されているの?なぜ高くなるの?
正常の場合
食事をすると、炭水化物は胃腸で消化吸収され、血液中の血糖(ブドウ糖)が増えます。すると血糖上昇に反応した膵臓からインスリンが分泌され、血液中の糖は各臓器(筋肉、肝臓、脂肪)の細胞へ運ばれ、大事なエネルギー源となります。この反応が正常に機能すれば、血液中の糖は溜まりすぎることなく、血糖値は100mg/dl前後(食事をしても140mg/dl未満)の狭い範囲で調整されます。
この糖の流れにおいて重要な事は、「1.膵臓が十分にインスリンを分泌できる事」と「2.インスリンが十分に各臓器に作用してブドウ糖が取り込まれる事」です。
糖尿病の場合
糖尿病は、膵臓からのインスリン分泌が減少する場合とインスリンが各臓器(筋肉、肝臓、脂肪)の細胞に十分に作用しない場合、あるいは両者が原因で発症します。
後述します1型糖尿病は、膵臓からのインスリン分泌低下が原因です。従って、治療の主体はインスリン療法になります。2型糖尿病は、基本的にはインスリンが各臓器(筋肉、肝臓、脂肪)の細胞に十分に作用しないこと(インスリン抵抗性と呼びます)が原因です。患者さんの状態によりますが治療の主体は、食事・運動療法になり、他を薬物療法で補います。
このように糖尿病のタイプ(病型)により、治療方法が違いますので、糖尿病がどのタイプ(病型)にあてはまるのか、初期の診断が非常に大切になってきます。
糖尿病のタイプ(成因分類)
1型糖尿病
膵臓にあるインスリンを産生・分泌するβ細胞が何らかの原因で破壊され、通常は絶対的インスリン欠乏に至ります。その場合、インスリン注射をしなければ生命に危険が及びます。
発症年齢は、小児~思春期に多いのですが、中高年で発症することもあります。
治療はインスリン療法が必須となります。近年インスリン療法の発展はめざましく、2001年の超速効型インスリンアナログ製剤の登場をかわきりに、インスリンポンプや持続グルコース測定を用いた治療の普及が進み、患者さんの生活の質は格段に向上しています。一方、医療機器の選択によっては医療費が高額になるデメリットもありますので、相談させて頂きながら治療方針を立てます。食事療法も重要ですが、後述の2型糖尿病とは考え方が異なり、食事内容(主に炭水化物量)にインスリンを調整する方法をとります。
2型糖尿病
糖尿病全体の90%以上。高血糖の原因としてインスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくい事)が主体のもの、あるいは両者の病態が合わさったものがあります。
発症には遺伝因子(家系)と環境因子(過食・肥満・運動不足など)の両者が関わっていますが、2型糖尿病は1型糖尿病より遺伝因子の影響が多いと言われています。40歳以上に多く、若年発症も増加しています。病態にもよりますが、治療の基本は生活習慣の調整(食事療法・運動療法)が主体となり、その他を患者さんの病態に適した薬物療法(経口薬と注射薬)で治療します。
妊娠中の糖代謝異常
妊娠中に発見される糖代謝異常(妊娠糖尿病と妊娠中の明らかな糖尿病)と糖尿病が妊娠前から存在している糖尿病合併妊娠があります。
それぞれ、独自の診断基準があります。一般的な糖尿病と食事・薬物療法(妊娠中は経口薬は使用できません)の内容が違います。
妊娠糖尿病の人が分娩後に正常型になっても、その後に比較的高率に糖尿病を発症することが指摘されています。出産後も定期的に経過をみる必要があります。
その他の特定の機序、疾患によるもの
遺伝子異常によるもの、肝臓(例:肝硬変)や膵臓(例:慢性膵炎、膵腫瘍術後)の病気やステロイドなどの薬剤によるものなどがあります。それぞれの病態に合わせた、食事・運動・薬物療法を提案させて頂きます。