血液中の尿酸値が7.0mg/dl以上と高い状態を高尿酸血症と言います。痛風とは高尿酸血症の状態が続き、足の関節などに尿酸の結晶が沈着することで、関節とその周辺組織で激しい炎症を起こす病気のことです。多くの場合、足の関節(特に足の親指の付け根)に急激に炎症が起こり、痛みとともに赤く腫れるなどの症状が出現します。その痛みは、痛風という名の通り、「風に吹かれただけでも痛む」ほどの激痛です。その他、足首、膝、手首、肘など、他の部位に生じることもあります。
発症年齢は、30~40歳に多いのですが、近年は若年層(20歳前後)の発症例も比較的多く報告され、肥満の関与が指摘されています。高尿酸血症による病気として、痛風が有名ですが、その他、尿路結石、腎機能障害(痛風腎)、動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)の原因になることから、他の生活習慣病と同様に日頃の管理が重要です。
原因
尿酸は、細胞中の核酸(DNA、RNA)が分解されるときの副産物です。日々体内で産生された尿酸は、腎臓(約2/3)や腸管(約1/3)から排泄されますが、正常な場合でも、少量の尿酸が血液中に存在します。また、食品に含まれるプリン体と呼ばれる物質が、体内で尿酸に変換され、高尿酸血症の原因の1つになります。
高尿酸血症は、この尿酸の産生と排泄のバランスが崩れて、体内の尿酸量が過剰になった状態のことを指します。
高尿酸血症のタイプには、3つあります。
- 尿酸排泄低下型:腎臓からの尿酸排泄効率が低下しているタイプ
- 混合型:尿酸産生過剰型+尿酸排泄低下型のタイプ
- 腎負荷型:尿酸産生過剰型(生体内での尿酸産生量が増加しているタイプ)+腎外排泄低下型(消化管からの尿酸排泄が低下しているタイプ)
頻度としては、尿酸排泄低下型 約60%、混合型 約30%、腎負荷型 約10%になります。ちなみに生活習慣の乱れによる内臓脂肪の蓄積は、インスリンの効きが悪くなるため、尿酸産生過剰や尿酸排泄低下を引き起こすとされています。
検査
健康診断で尿酸値が高いと指摘されたときは、高尿酸血症の可能性があります。高尿酸血症は、血液中に含まれる尿酸が多い状態で、痛風や腎臓病、動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)などのリスクを高めるため、一度でも尿酸値を指摘された場合は早めの受診や検査をおすすめします。
【検査前の注意点】
- 検査は通常、空腹時に行われます。
- 脱水状態になると血液中の尿酸値が上昇するため、水分は適度に摂取してください。
- 服用中の薬がある場合は、事前に医師やスタッフにお知らせください。
- 尿検査を受ける場合は、検査の3日程前からプリン体が多く含む食べ物や飲酒は控えてください。プリン体を多く含む食品については、下記の「予防」の項目をご確認ください。
血液検査
血中の尿酸値を調べます。尿酸値が7mg/dlを超えていると、痛風の原因となる高尿酸血症と診断されます。
尿検査
病態を正確に把握するには、24時間の蓄尿による検査が必要ですが、クリニックなど外来で行うには現実的ではありません。採血検査で腎機能が正常であれば、随時尿(早朝尿以外の外来受診時に採取する尿)による簡便法で検査を行います。
超音波検査
超音波検査で痛風発作時に関節軟骨表面に沈着した尿酸結晶を確認し、診断の補助とします。また、尿路結石の有無も調べます。
その他
尿酸クリアランス検査、関節液検査、レントゲン検査など必要に応じて検査を行います。他の病気との鑑別が必要な場合は、近隣の整形外科にも介入依頼を行います。
治療
痛風発作時の治療
この時期は、まずは炎症を鎮静化させることを優先します。痛風発作時には、後述の尿酸降下薬は使用しません。急激な尿酸値の変動は、かえって発作を悪化させます。
前兆期:コルヒチン
痛風発作極期:非ステロイド抗炎症薬、無効な場合は経口副腎皮質ステロイドを投与します。
高尿酸血症に対しての治療
高尿酸血症の治療には、食事療法、運動療法、薬物療法があります。
食事療法では、プリン体を多く含む食品の摂取を控えることが重要です。ビールはプリン体を比較的多く含むため避けた方がよいことは広く知られていますが、焼酎やウイスキーなどの蒸留酒に変えれば問題が解決するわけではありません。アルコール自体に尿酸値を上げる作用があるため、禁酒や節酒が高尿酸血症の治療において欠かせないポイントになります。
また、内臓脂肪の蓄積は尿酸の産生を促進するだけでなく、排泄も低下させるため、高尿酸血症を悪化させる原因になります。 そのため、食事療法に加えて運動療法を取り入れ、肥満を解消することが重要です。
薬物療法の開始基準は以下の通りです。
(1)血清尿酸値7.0mg/dl以上で、痛風関節炎や痛風結節の既往がある場合
(2)血清尿酸値8.0mg/dl以上で合併症(腎障害、尿路結石、高血圧症、糖尿病、メタボリックシンドローム、虚血性心疾患)がある場合
(3)血清尿酸値9.0mg/dl以上の場合
これらに該当する場合は、薬物療法(尿酸産生抑制薬や尿酸排泄促進薬)の開始を検討します。患者さんの状態や高尿酸血症のタイプに応じて、薬剤を使い分け、血清尿酸値 6.0mg/dl以下を維持するように治療します。
お薬は比較的長期間にわたって服用することになりますが、その間に生活習慣の改善ができ、血清尿酸値が低下してくれば、お薬を減らしたり、場合によっては中止することも可能です。
予防
生活習慣の改善が非常に重要です。
【予防のポイント】
- プリン体を多く含む食品を避ける
えび、レバー類、干物(いわし、あじ)、いくら、たらこ、かつお、干し椎茸、ビールなど
- 水分摂取を心掛ける
- アルコールを控える
- 運動を併用した肥満の解消
食事
レバーや干物などプリン体が多い食品を食べすぎないようにし、糖質の過剰摂取も肥満につながりますので注意しましょう。また暴飲暴食はせず、バランスのよい食事を1日3食、規則正しく食べるようにしましょう。
アルコール類も尿酸値を上昇させますので、お酒の種類を問わず極力控えましょう。そして、水分をとることで尿酸を尿として排泄しやすくするため、砂糖を多く含むジュースやカフェインを多く含むコーヒーなどではなく、水やお茶を1日2Lほど飲むのもおすすめです。
運動
筋肉トレーニングのような無酸素運動や激しい運動は尿酸値を上げる原因になります。ストレスも尿酸値を上昇させる要因になりますので、ストレス発散に週に2~3回、軽い運動を継続して行うことが大切です。ウォーキング、スロージョギング(歩くぐらいの速さで走る)などがおすすめです。