糖尿病

糖尿病とは?

糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリン(血糖を下げるホルモン)が減少する、あるいは膵臓からインスリンが分泌されていても十分に働かないために、体内で血糖(ブドウ糖)が有効に活用されず、血液中の糖が高くなっている状態をいいます。高血糖状態が長期間続くと、特有の血管合併症を引き起こします。
数多くの治療選択肢がありますが、薬に頼りすぎる治療はよくありません。何が原因で高血糖になっているのか。患者さんのライフスタイル、糖尿病のタイプや病態を適切に判断し、その原因を捉えることがとても重要だと考えています。当クリニックでは、初診時に問診や検査に十分時間を割いた上で、一人ひとりのライフスタイルや身体の状態に合わせた食事、運動、薬物療法を提案させて頂きます。皆さんが楽しく健康的な生活が送れるようスタッフ一同、連携してサポートさせて頂きます。

血糖がどのようにして体の中で処理されているか?なぜ高くなるのか?

正常の場合

食事をすると、炭水化物は胃腸で消化吸収され、血液中の血糖(ブドウ糖)が増えます。すると血糖上昇に反応した膵臓からインスリンが分泌され、血液中の糖は各臓器(筋肉、肝臓、脂肪)の細胞へ運ばれ、大事なエネルギー源となります。この反応が正常に機能すれば、血液中の糖は溜まりすぎることなく、血糖値は100mg/dl前後(食事をしても140mg/dl未満)の狭い範囲で調整されます。
この糖の流れにおいて重要な事は、「1.膵臓が十分にインスリンを分泌できる事」と「2.インスリンが十分に各臓器に作用してブドウ糖が取り込まれる事」です。
正常の場合

糖尿病の場合

糖尿病は、膵臓からのインスリン分泌が減少する場合とインスリンが各臓器(筋肉、肝臓、脂肪)の細胞に十分に作用しない場合、あるいは両者が原因で発症します。
後述します1型糖尿病は、膵臓からのインスリン分泌低下が原因です。従って、治療の主体はインスリン療法になります。2型糖尿病は、基本的にはインスリンが各臓器(筋肉、肝臓、脂肪)の細胞に十分に作用しないこと(インスリン抵抗性と呼びます)が原因です。患者さんの状態によりますが治療の主体は、食事・運動療法になり、他を薬物療法で補います。
このように糖尿病のタイプ(病型)により、治療方法が違いますので、糖尿病がどのタイプ(病型)にあてはまるのか、初期の診断が非常に大切になってきます。
糖尿病の場合

糖尿病のタイプ(成因分類)

1型糖尿病

膵臓にあるインスリンを産生・分泌するβ細胞が何らかの原因で破壊され、通常は絶対的インスリン欠乏に至ります。その場合、インスリン注射をしなければ生命に危険が及びます。
発症年齢は、小児~思春期に多いのですが、中高年で発症することもあります。
治療はインスリン療法が必須となります。近年インスリン療法の発展はめざましく、2001年の超速効型インスリンアナログ製剤の登場をかわきりに、インスリンポンプや持続グルコース測定を用いた治療の普及が進み、患者さんの生活の質は格段に向上しています。一方、医療機器の選択によっては医療費が高額になるデメリットもありますので、相談させて頂きながら治療方針を立てます。食事療法も重要ですが、後述の2型糖尿病とは考え方が異なり、食事内容(主に炭水化物量)にインスリンを調整する方法をとります。

2型糖尿病

糖尿病全体の90%以上。高血糖の原因としてインスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくい事)が主体のもの、あるいは両者の病態が合わさったものがあります。
発症には遺伝因子(家系)と環境因子(過食・肥満・運動不足など)の両者が関わっていますが、2型糖尿病は1型糖尿病より遺伝因子の影響が多いと言われています。40歳以上に多く、若年発症も増加しています。病態にもよりますが、治療の基本は生活習慣の調整(食事療法・運動療法)が主体となり、その他を患者さんの病態に適した薬物療法(経口薬と注射薬)で治療します。

妊娠中の糖代謝異常

妊娠中に発見される糖代謝異常(妊娠糖尿病と妊娠中の明らかな糖尿病)と糖尿病が妊娠前から存在している糖尿病合併妊娠があります。
それぞれ、独自の診断基準があります。一般的な糖尿病と食事・薬物療法(妊娠中は経口薬は使用できません)の内容が違います。
妊娠糖尿病の人が分娩後に正常型になっても、その後に比較的高率に糖尿病を発症することが指摘されています。出産後も定期的に経過をみる必要があります。

その他の特定の機序、疾患によるもの

遺伝子異常によるもの、肝臓(例:肝硬変)や膵臓(例:慢性膵炎、膵腫瘍術後)の病気やステロイドなどの薬剤によるものなどがあります。それぞれの病態に合わせた、食事・運動・薬物療法を提案させて頂きます。

糖尿病の診断と症状

血糖値HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を測定し、以下の条件に当てはまる場合に糖尿病の診断とします。初回の検査で糖尿病と診断されなければ、別の日に2回目の検査を行います。※各種検査機器を院内に設置していますので、検査結果は受診当日に分かります。
1〜4のいずれかで「糖尿病型」
  1. 早朝空腹時血糖値が126mg/dl以上
  2. 75gOGTTが200mg/dl以上
  3. 随時血糖値が200mg/dl以上
  4. HbA1cが6.5%以上
<初回の検査>
1〜3のいずれか1つ
+
4
または
糖尿病の典型的な症状(口渇、多尿など)
確実な糖尿病網膜症
糖尿病

糖尿病診断時に使用する用語

  • HbA1c:過去1~2ヵ月間の平均血糖値を反映。
    血糖値は、1日の中で食事内容や活動量で常に変動していますので、受診時のワンポイントの血糖値のみでは全体的な把握は困難です。そこで、HbA1cという検査値を用います。HbA1cは、過去1~2ヶ月間の平均血糖値を反映するもので、血糖値のように時間単位で変動するものではありません(例:診察前日に夕食を食べ過ぎても、HbA1cの値には大きく影響しません)。HbA1cは、糖尿病の診断血糖コントロールの指標になります。血糖値が正常な方は5.6%未満です。
  • 早朝空腹時血糖値:早朝に(8時間以上の絶食後)採血したときの血糖値。
  • 75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT):75gのブドウ糖水などを飲み、その2時間後に採血したときの血糖値。
  • 随時血糖値:食事の時間と関係なく採血したときの血糖値。

高血糖症状

正常な方では、血糖値は70~140mg/dlの範囲で推移しています。もちろん特に症状は出てきませんが、血糖値が多少高い程度(150-200 mg/dl前後)でもほとんど症状を自覚しないところが、糖尿病の恐い所です。そのため、採血検査で血糖の状態を評価する必要があります。個人差はありますが一般的に血糖300mg/dl前後になってはじめて、高血糖症状(口喝、多飲、多尿、体重減少)が出現します。

代表的な高血糖症状

  • 口渇(のどの渇き)
  • 多飲(水分摂取量が増える)
  • 多尿(頻繁にトイレに行く、夜間尿が増える)
  • 体重減少
  • 倦怠感(だるさ、疲れがとれない)
代表的な高血糖症状

糖尿病合併症の種類

血管は頭の天辺から足の先まで体の隅々まで走っています。高血糖の持続は、体の隅々まで走っている血管を障害し、糖尿病特有の合併症を引き起こします。
大きく分けると細い血管にみられる合併症(細小血管症)と、太い血管にみられる合併症(大血管症)の2つがあります。細小血管症には「神経障害」「網膜症」「腎症」があり、いわゆる糖尿病の3大合併症です。大血管症には、脳卒中、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症、認知症などがあります。
また、高血糖状態が持続すると免疫力の低下や歯周病の合併、創傷治癒遅延(傷の治りが悪い)、悪性腫瘍の発生などが問題になります。
いずれの合併症も血糖を初めとした生活習慣病(血圧、脂質、尿酸、体重)のコントロールを適切に行うことが重要となります。しかし、これらの合併症は自覚症状が現われにくいため、発見が遅れることも少なくありません。早期発見・管理が重要となりますので、当クリニックでサポートさせて頂きます。糖尿病網膜症については眼科で眼底検査などを定期的に行う必要がありますので、当クリニックで紹介状を作成します。
糖尿病合併症の種類

糖尿病の治療目標

糖尿病の治療は、血糖・血圧・脂質・体重の良好なコントロールを長期的に行い、糖尿病合併症を発症させることなく、進行を防ぐことで、健康な人と同じような生活を送ることを目標にしています。血糖(その他、血圧・脂質・体重)を可能な限り、正常域に近づけ、良好な状態を維持するが重要です。しかしながら一時的に血糖値を良くすることは出来ても、継続して良好な状態を維持することは、存外難しいものです。
当クリニックでは初期治療はさることながら、「良好な状態を維持する」サポートにも力を入れています。そのために、日頃の血糖変動を把握する必要がありますが、血糖は顔色だけでは判断が難しく、検査が必要です。ご面倒だと思いますが、月1回(長くても2~3ヶ月に1回)は来院頂いて状態を把握し、少し軌道修正をしながら治療することが、良好な状態を維持する近道だと考えています。

日本糖尿病学会から発表された血糖コントロール目標値

目標 血糖正常化を目指す際の目標値 合併症予防のための目標値 治療強化が困難な際の目標
HbA1c(%) 6.0%未満 7.0%未満 8.0%未満
※治療目標は年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して、個別に設定する。
まずは合併症予防のための目標値「HbA1c 7.0%未満」を目指します。
ただ一律でないことが重要で、患者さんの状態治療内容考慮して判断します。さらなる血糖改善が可能と判断した場合は、「HbA1c 6.0%未満」を目標にしますし、患者さんの状態や治療内容として、低血糖のリスクが高くなる、生活の質が落ちるなど、逆に不利益を被る可能性がある場合は、「HbA1c 8.0%未満」とします。ご高齢の糖尿病患者さんの場合は、もう少し複雑になりますので、外来で相談させて頂きながら治療方針を決定します。

血糖測定について

血糖値は、1日の中で常に変動しています。食事、運動、睡眠不足、ストレスなどで血糖値は上下していますが、血糖値を知るために毎回病院にきて採血をするのは大変です。そこで日常診療では、簡易血糖測定器を使った血糖自己測定を行い、治療方針の一助としています。
当クリニックでは、従来から使用されている血糖測定器のほか、持続血糖測定器も取り扱っています。
※インスリンやGLP-1受容体作動薬で治療中の方は、保険診療で血糖自己測定が行えます。
食事療法のみ、内服薬での治療の方で血糖自己測定をご希望される方は、自費での購入になります。

血糖自己測定(SMBG:Self Monitoring of Blood Glucose)とは?

簡易血糖測定器を使った血糖自己測定のことです。自宅でも血糖測定が可能になります。日常生活の中で血糖を測定することで、食事や運動による血糖変動を把握できますので、より良い血糖コントロールが期待できます。
穿刺器具で指先を刺し、微量の血液(毛細血管血)を出します。
血液をセンサーに吸い取らせますと、数秒で血糖測定器のモニターに血糖値が表示されます。

持続血糖測定(CGM:Continuous Glucose Monitor)とは?

近年、持続血糖モニター (CGM)が登場し、糖尿病診療の質はさらに向上しました。
持続血糖モニターは、腕に貼り付けた500円玉大のセンサーにより皮下の間質液(細胞と細胞の間に存在する液体)中の血糖(SG値:センサーグルコース値、皮下グルコース値)を測定します。従来の血糖自己測定(SMBG)との違いは、以下の通りです。
  1. 前述の毛細血管血ではなく、間質液中の血糖(SG値)を測定している点
  2. 指先を穿刺する必要がなく、測定結果を読み取るリーダーを腕につけたセンサーにかざすだけでSG値がわかる点
  3. 24時間連続して血糖の変動傾向を確認できる点
2.と3.により、毎回指先を刺す必要がなく、かつ従来のSMBGでは把握が困難だった、夜間や食後血糖などを24時間モニターできるようになった事は、実に画期的なことです。

持続血糖測定(CGM:Continuous Glucose Monitor)の種類

持続血糖測定の用途に合わせて、臨床検査用のプロフェッショナルCGMのほか、日々の血糖自己管理用のパーソナルCGMである、リアルタイムCGM(real-time CGM:rtCGM)と間欠スキャン式CGM(intermittently scanned CGM:isCGM)の3つがあります。
※1型糖尿病、2型糖尿病を問わず使用できますが、保険診療で行う場合、対象となる方は限られますので、診療の際にご相談ください。
※当クリニックでは、間欠スキャン式CGMを取り扱っています。2022年6月以降にプロフェッショナルCGMとリアルタイムCGMの取り扱いを開始する予定です。

プロフェッショナルCGM

  • センサーを腕に14日間つけたまま、行動記録(食事内容や運動などの活動記録)をとりながら、いつも通り生活して頂きます。
  • 14日間装着したあと、当クリニックでデータを取り込みます。途中経過は確認できませんが、夜間の血糖や行動記録と血糖変動を照らし合わせて、食事や運動、薬物療法が血糖値に与える影響を確認できます。日々の血糖管理の参考になります。

パーソナルCGM

リアルタイムCGM(real-time CGM:rtCGM)
  • 文字通り、リアルタイムに(その場で)、皮下グルコース値を確認できます。血糖上昇下降トレンド(今後血糖が上昇傾向なのか下降傾向なのかを示してくれる機能)や様々なアラート機能(高血糖や低血糖の時にお知らせする機能)を搭載しています。装着期間は、機種によりますが、7~14日間です。
  • 1日2回血糖自己測定を行い、較正する必要があります。
    較正:定期的に血糖自己測定(SMBG)の値を入力することで、間質液で測定した値を血糖値に近づけること。
  • インスリン頻回注射またはSAP以外のインスリンポンプ治療を行っているが、血糖が不安定で予期せぬ低血糖や著明な高血糖を繰り返す糖尿病患者さんが保険で使用可能です。
  • インスリンポンプと併用し、センサー付きインスリンポンプ(SAP:sensor-augmented insulin pump)として使用できます。
リアルタイムCGM
間欠スキャン式CGM(intermittently scanned CGM:isCGM)
  • 腕に500円玉大のセンサーを貼り付けます。測定結果を読み取るリーダーでスキャンするだけで、皮下グルコース値がわかります。
  • かざした時点から8時間前までの皮下グルコース値の流れを確認できます。
  • 14日間使用可能です。
  • リアルタイムCGMと違い、血糖自己測定による較正の必要はありません。
  • NFC搭載のスマートフォンであれば、現在ご使用のスマートフォンをリーダーとして使用可能です。加えて、レポートを確認できます。
  • インスリン注射製剤の自己注射を1日1回以上行っている糖尿病患者さんであれば、保険で使用可能です。
  • リアルタイムCGMのようなアラート機能はありませんが、血糖上昇下降トレンドが確認できます。
間欠スキャン式CGM

糖尿病の治療方法

食事・運動・薬物療法が糖尿病治療の3本柱になります。治療方法は一律ではなく、前述しました糖尿病のタイプ、患者さん毎のライフスタイル、状態を考慮して治療法を提案します。一定の生活習慣の是正は必要と考えていますが、無理な食事制限、運動過多、薬物療法は長くは続けられませんし、反って体を害することになりかねないため、お勧めしていません。糖尿病は長く付き合っていく病気ですので、当クリニックでは適正体重(BMI21~22)を意識しつつも、「細く、長く、楽しく」をモットーに診療を行っています。

食事療法

日本糖尿病学会が推奨する標準的な食事療法と糖質制限があります。それぞれ一長一短がありますので、一緒に考えていきましょう。厳格に守って行うことよりも、個人のライフサイクルを大きく崩さないやり方をお勧めしています。

日本糖尿病学会が推奨する標準的な食事療法

  • 1日のエネルギー摂取量を、目標体重(身長から計算)とエネルギー係数(日々の活動量)から算出します。
  • 一般的には、算出された1日のエネルギー摂取量の40~60%を炭水化物、20%をタンパク質、残りを脂質とします。

糖質制限

  • 様々な糖質制限方法がありますが、当クリニックで行う場合は、緩やかな糖質制限(1日糖質摂取量130g/日)を紹介しています。
  • 糖質制限を行う際の注意点、短期的・長期的な効果を十分にご理解頂く必要があります。

運動療法

食事療法や薬物療法に比べると影が薄くなりがちですが、重要な治療法の1つになります。血糖を下げるためにはインスリンの作用により糖が骨格筋(筋肉)、肝臓、脂肪に取り込まれる必要があります。その糖の取り込み率は骨格筋約70%、肝臓約30%、脂肪組織数%と言われていますので、骨格筋(筋肉)は血糖値を改善させるためには大切な組織になります。運動の継続は、前述のインスリン抵抗性を改善させます(糖が組織に取り込まれやすい体になる=血糖が下がりやすい体になります)。
  • 運動療法はレジスタンス運動と有酸素運動に分類されます。レジスタンス運動とは、スクワットや腕立て伏せなど、いわゆる筋肉トレーニングのことです。有酸素運動とは、ジョギングなど酸素供給に見合った強度の運動のことです。両者はともに血糖値を改善し、併用によりさらに効果が期待できます。
  • 運動の強度。簡易的には50歳未満は100-120拍/分、50歳以上では100拍/分未満が目安です。体感としては、「ややきつい」、「軽く汗ばむ」程度を参考にしてください。15秒脈拍を数えて4倍するなど計算してもいいですが、最近ではスマートウォッチを活用すると便利です。
  • 運動の持続時間は20分以上、週3回(運動がない日が2日間以上続かない)を目標にしてください。

注意点

運動療法を禁止あるいは制限する必要がある方もいますので、運動療法を開始する前に一度ご相談ください。
(例:極端な高血糖:空腹時血糖値250mg/dl以上、管理されていない網膜症、心肺機能に障害がある場合など)

薬物療法

薬物療法には、「経口薬療法」と「注射薬療法」があります。

経口薬療法

近年DPP-4阻害剤やSGLT2阻害剤などの新薬が続々と登場し、治療の選択肢が増えています。経口薬は8系統、30種類以上あり、同じ系統(例:SGLT2阻害剤)の中でも微妙な効き方の違いがあります。個人のライフスタイルと状態に合った適切な薬物療法を選択できることが、糖尿病専門医の強みです。
当クリニックでは、最新の医療情報をもとに、出来るだけ最小限の薬剤で治療したいと考えています。患者さんが納得しないまま、治療を強要することはしません。

注射薬療法

注射薬は敷居が高く、「注射を始めたら一生続ける必要があるのでは?」と考えている方もいらっしゃると思います。下記のようなインスリン適応の方はいますが、外来初診時に時折遭遇します2型糖尿病による高血糖の場合は、初期治療をしっかり行えば、徐々にインスリンを減らし、中止できる方も少なくありません。ここは糖尿病専門医の腕の見せ所ですが、必要な病態、必要な時期に注射薬を提案しています。その際は十分な説明を行い、納得頂いた上で治療を開始しますので、疑問に思うことがあれば何でもご相談ください。
またインスリン導入後、体重が徐々に増えてきた方もいらっしゃると思います。インスリン製剤を使用するにあたって、低血糖を起こさず、適正体重(BMI21~22)を保ちながら治療を行うことはとても重要です。食事療法・運動療法・経口薬を見直し、適切なインスリン量を提案させて頂きます。
【インスリン療法の絶対的適応】
  • インスリン依存状態
  • 高血糖性の昏睡(糖尿病ケトアシドーシスなど)
  • 重症の肝障害、腎障害を合併
  • 重症感染症、外傷、中等度以上の外科手術(全身麻酔施工例)
  • 糖尿病合併症妊娠、妊娠糖尿病で食事療法だけでは良好な血糖コントロールが得られない時
  • 静脈栄養時の血糖コントロール
【インスリン療法の相対的適応】
  • 著明な高血糖(空腹時血糖値250mg/dl以上、随時血糖値350mg/dl以上)を認める場合
  • 経口薬療法のみでは、良好な血糖コントロールが得られない場合
  • やせ型で栄養状態が低下している場合
  • ステロイド治療時に高血糖を認める場合
  • 糖毒性を積極的に解除する場合
※インスリンを分泌する膵臓にあるβ細胞は、高血糖状態が長期に及ぶと、働かなくなってしまうことがあります。その際に、インスリンを外から補給して膵臓を休ませると、インスリン分泌能が回復することがあります。これを、糖毒性の解除と呼びます。インスリンの分泌能が十分に回復すれば、経口薬治療に戻すことができる場合もあります。
高血糖状態が長期に及ぶと、膵臓の機能が著しく低下します。その際に、インスリンを外から補給して膵臓を休ませると、膵機能(インスリン分泌能)が回復することがあります。これを糖毒性の解除と呼びます。膵臓が十分に回復すれば、経口薬に移行できる場合もあります。
現代においては、注射薬=インスリンではありません。注射薬には、「GLP-1受容体作動薬」と「インスリン製剤」があります。同じ注射薬ですが、効能効果は全く違います。GLP-1受容体作動薬は、血糖値に応じて膵臓からインスリンを分泌させるため、低血糖が起こりにくく、食欲や体重を減らす効果もあります。近年では心血管リスク抑制効果の報告もある製剤です。GLP-1受容体作動薬は1日1回(あるいは週1回)の投与ですし、使い方によっては大きな武器になります。

インスリンポンプ療法について

インスリン療法には、ペン型インスリンを1日1~5回皮下注射する治療法のほかに、持続的にインスリンを注入する携帯型の小型機器を用いたインスリンポンプ(CSII: Continuous Subcutaneous Insulin Infusion)療法があります。加えて、パーソナルCGM機能(リアルタイムに血糖値を持続的に測定する機能)がついたインスリンポンプ(SAP:Sensor Augmented Pump)療法もあります。
リアルタイムCGM

膵臓から分泌されるインスリンについて

膵臓から分泌されるインスリンには2種類あります。1日中ほぼ一定量分泌される「基礎分泌」と食事による血糖上昇に応じて分泌される「追加分泌」です。通常は、膵臓からの基礎分泌と追加分泌が十分に機能しているため、血糖値は1日の間で、100mg/dl前後、食事をしても140mg/dl未満の狭い範囲で推移しています。

2種類のインスリンをどのように補充するか

ペン型のインスリン療法では、主に膵臓からの基礎分泌を補う持効型インスリン(作用時間が長いインスリン:青色)と追加分泌を補う超速効型インスリン(作用時間が短いインスリン:橙色)の2種類を使用します。持効型インスリンを1日1回、超速効型インスリンを食事の回数分、皮下注射します。その他、2種類のインスリンを混ぜた混合型インスリンがあり、1日1~2回皮下注射します。
一方で、インスリンポンプ療法では、超速効型インスリンをポンプに充填し、1種類のインスリンで基礎分泌と追加分泌を補い、血糖コントロールを行います。2~3日に1回のポンプへの補填とチューブ交換を行います。

わざわざインスリンポンプ療法にする必要はある?

ペン型のインスリン療法を行うことで、膵臓の働きを真似ることが可能です。しかし、膵臓から分泌されるインスリンが著明に低下した患者さんにおいては、それが困難なことがあり、血糖値が乱高下し、思わぬ高血糖や低血糖を繰り返す場合があります。その原因の一つに、膵臓からの基礎分泌が常に一定量ではなく、一日の中で分泌量に変動があることが挙げられます。また、追加分泌に関しても、焼肉や中華料理(脂質やたんぱく質の比率が高い食事)を食べた場合、超速効型インスリンを打っても思いのほか、数時間後の血糖値が高くなることもあります。
自身のインスリン分泌能が一定量保持されていれば、インスリン皮下注射+自己の膵臓の能力(状況に合わせて血糖値を微調整する能力)で、比較的血糖変動を認めずに日常生活を送れます。しかし、膵臓からのインスリン分泌が著明に低下した場合は、ペン型のインスリン療法にすべて頼ることになるため、基礎分泌と追加分泌を十分に補えずに、血糖変動が起こってきます。
これらのニーズに応えるべく開発されたのが、インスリンポンプ療法です。インスリンポンプ療法では、基礎インスリンを時間ごとに自由に増減でき、追加インスリンに関しても、食事内容に合わせて、設定された3種類のメニューの中から選択できます。これにより本来の膵臓の働きに近い形で治療が行えるため、血糖コントロールのみならず、生活の質が格段に改善されます。

インスリンポンプ療法の良い適応

  1. 高血糖や低血糖を繰り返すなど、血糖コントロールが不安定(1型糖尿病、インスリン分泌能が著明に低下した2型糖尿病)
  2. 暁(あかつき)現象(早朝に高血糖になる現象)が顕著
  3. ライフスタイルに変化が多い(シフトワーク、出張が多い、よく運動をするなど)
  4. 妊娠中もしくは妊娠前血糖コントロール

インスリンポンプ療法のメリット

  • ペン型インスリンでは、1日1〜5回の皮下注射が必要ですが、インスリンポンプ療法では、2~3日に1回のチューブ交換で済む(注射の回数が劇的に減ります。外食が楽になります)
  • 治療の幅が広がる(食事内容により3種類の追加インスリン設定ができる、勤務体制、運動、月経周期など状況に合わせて基礎インスリン調整が可能)
  • パーソナルCGM機能がついたSAP療法であれば、低血糖時に自動停止(血糖が上昇してきたら再開)する機能がある

インスリンポンプ療法のデメリット

  • 機器を使いこなすために、一定の知識(カーボカウント、機器の操作など)が必要
  • ポンプトラブル(例:ポンプ閉塞)発生時の対処法を熟知する必要がある
  • 皮膚トラブルが少なくない
  • 医療費の負担が増える

当クリニックでの診療の流れ

STEP
受付
受付と簡単な問診票の記入をしていただきます。医師の紹介状や健康診断などの結果、お薬手帳、糖尿病手帳がありましたらご一緒にご提出ください。
STEP
測定
身長、体重、体組成の測定を行います。
STEP
診察
病歴とライフサイクルの確認をいたします。患者さんのライフサイクルと病型(糖尿病のタイプ)を初診時に適切に把握することはとても重要だと考えています。問診や検査、診察などで初診時にはお時間がかかりますが、ご理解の程、宜しくお願いします。
STEP
検査
採血、採尿を行います。必要があれば、腹部超音波(エコー)検査などの画像検査、動脈硬化の評価(脈波伝播速度、頸動脈エコー検査など)を行います。また、網膜症に関しては眼科、脳血管障害や認知症に関しては脳神経外科など近隣の病院やクリニックと連携して加療します。
STEP
診察
検査結果と治療方針の説明(適宜、栄養相談)をいたします。不安なことなど何でもご相談ください。
STEP
お会計
初診時は、およそ2,000〜3,000円です。(3割負担の場合)