糖尿病の治療目標
糖尿病の治療は、血糖・血圧・脂質・体重の良好なコントロールを長期的に行い、糖尿病合併症を発症させることなく、進行を防ぐことで、健康な人と同じような生活を送ることを目標にしています。血糖(その他、血圧・脂質・体重)を可能な限り、正常域に近づけ、良好な状態を維持するが重要です。しかしながら一時的に血糖値を良くすることは出来ても、継続して良好な状態を維持することは、存外難しいものです。
当クリニックでは初期治療はさることながら、「良好な状態を維持する」サポートにも力を入れています。そのために、日頃の血糖変動を把握する必要がありますが、血糖は顔色だけでは判断が難しく、検査が必要です。ご面倒だと思いますが、月1回(長くても2~3ヶ月に1回)は来院頂いて状態を把握し、少し軌道修正をしながら治療することが、良好な状態を維持する近道だと考えています。

日本糖尿病学会から発表された血糖コントロール目標値

目標 血糖正常化を目指す際の目標値 合併症予防のための目標値 治療強化が困難な際の目標
HbA1c(%) 6.0%未満 7.0%未満 8.0%未満
※治療目標は年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して、個別に設定する。
まずは合併症予防のための目標値「HbA1c 7.0%未満」を目指します。
ただ一律でないことが重要で、患者さんの状態治療内容考慮して判断します。さらなる血糖改善が可能と判断した場合は、「HbA1c 6.0%未満」を目標にしますし、患者さんの状態や治療内容として、低血糖のリスクが高くなる、生活の質が落ちるなど、逆に不利益を被る可能性がある場合は、「HbA1c 8.0%未満」とします。ご高齢の糖尿病患者さんの場合は、もう少し複雑になりますので、外来で相談させて頂きながら治療方針を決定します。

血糖測定について

血糖値は、1日の中で常に変動しています。食事、運動、睡眠不足、ストレスなどで血糖値は上下していますが、血糖値を知るために毎回病院にきて採血をするのは大変です。そこで日常診療では、簡易血糖測定器を使った血糖自己測定を行い、治療方針の一助としています。
当クリニックでは、従来から使用されている血糖測定器のほか、持続血糖測定器も取り扱っています。
※インスリンやGLP-1受容体作動薬で治療中の方は、保険診療で血糖自己測定が行えます。
食事療法のみ、内服薬での治療の方で血糖自己測定をご希望される方は、自費での購入になります。

血糖自己測定(SMBG:Self Monitoring of Blood Glucose)とは?

簡易血糖測定器を使った血糖自己測定のことです。自宅でも血糖測定が可能になります。日常生活の中で血糖を測定することで、食事や運動による血糖変動を把握できますので、より良い血糖コントロールが期待できます。
穿刺器具で指先を刺し、微量の血液(毛細血管血)を出します。
血液をセンサーに吸い取らせますと、数秒で血糖測定器のモニターに血糖値が表示されます。

持続血糖測定(CGM:Continuous Glucose Monitor)とは?

近年、持続血糖モニター (CGM)が登場し、糖尿病診療の質はさらに向上しました。
持続血糖モニターは、腕に貼り付けた500円玉大のセンサーにより皮下の間質液(細胞と細胞の間に存在する液体)中の血糖(SG値:センサーグルコース値、皮下グルコース値)を測定します。従来の血糖自己測定(SMBG)との違いは、以下の通りです。
  1. 前述の毛細血管血ではなく、間質液中の血糖(SG値)を測定している点
  2. 指先を穿刺する必要がなく、測定結果を読み取るリーダーを腕につけたセンサーにかざすだけでSG値がわかる点
  3. 24時間連続して血糖の変動傾向を確認できる点
2.と3.により、毎回指先を刺す必要がなく、かつ従来のSMBGでは把握が困難だった、夜間や食後血糖などを24時間モニターできるようになった事は、実に画期的なことです。

持続血糖測定(CGM:Continuous Glucose Monitor)の種類

持続血糖測定の用途に合わせて、臨床検査用のプロフェッショナルCGMのほか、日々の血糖自己管理用のパーソナルCGMである、リアルタイムCGM(real-time CGM:rtCGM)と間欠スキャン式CGM(intermittently scanned CGM:isCGM)の3つがあります。
※1型糖尿病、2型糖尿病を問わず使用できますが、保険診療で行う場合、対象となる方は限られますので、診療の際にご相談ください。
※当クリニックでは、間欠スキャン式CGMを取り扱っています。2022年6月以降にプロフェッショナルCGMとリアルタイムCGMの取り扱いを開始する予定です。

プロフェッショナルCGM

  • センサーを腕に14日間つけたまま、行動記録(食事内容や運動などの活動記録)をとりながら、いつも通り生活して頂きます。
  • 14日間装着したあと、当クリニックでデータを取り込みます。途中経過は確認できませんが、夜間の血糖や行動記録と血糖変動を照らし合わせて、食事や運動、薬物療法が血糖値に与える影響を確認できます。日々の血糖管理の参考になります。

パーソナルCGM

リアルタイムCGM(real-time CGM:rtCGM)
  • 文字通り、リアルタイムに(その場で)、皮下グルコース値を確認できます。血糖上昇下降トレンド(今後血糖が上昇傾向なのか下降傾向なのかを示してくれる機能)や様々なアラート機能(高血糖や低血糖の時にお知らせする機能)を搭載しています。装着期間は、機種によりますが、7~14日間です。
  • 1日2回血糖自己測定を行い、較正する必要があります。
    較正:定期的に血糖自己測定(SMBG)の値を入力することで、間質液で測定した値を血糖値に近づけること。
  • インスリン頻回注射またはSAP以外のインスリンポンプ治療を行っているが、血糖が不安定で予期せぬ低血糖や著明な高血糖を繰り返す糖尿病患者さんが保険で使用可能です。
  • インスリンポンプと併用し、センサー付きインスリンポンプ(SAP:sensor-augmented insulin pump)として使用できます。
リアルタイムCGM
間欠スキャン式CGM(intermittently scanned CGM:isCGM)
  • 腕に500円玉大のセンサーを貼り付けます。測定結果を読み取るリーダーでスキャンするだけで、皮下グルコース値がわかります。
  • かざした時点から8時間前までの皮下グルコース値の流れを確認できます。
  • 14日間使用可能です。
  • リアルタイムCGMと違い、血糖自己測定による較正の必要はありません。
  • NFC搭載のスマートフォンであれば、現在ご使用のスマートフォンをリーダーとして使用可能です。加えて、レポートを確認できます。
  • インスリン注射製剤の自己注射を1日1回以上行っている糖尿病患者さんであれば、保険で使用可能です。
  • リアルタイムCGMのようなアラート機能はありませんが、血糖上昇下降トレンドが確認できます。
間欠スキャン式CGM